「一人でも助けたい。その思いはみな同じだった」。知床半島沖の観光船事故は、医療が脆弱(ぜいじゃく)な地域で起きた。潤沢とは言えない態勢下で、命を救うために人知れず備えた病院があった。=敬称略
4月23日午後4時すぎ、小清水赤十字病院(北海道小清水町)に消防から連絡が入った。
「遭難者の受け入れは可能ですか」
2時間半ほど前、約70キロ離れた知床半島沖で観光船「KAZUⅠ(カズワン)」が消息を絶っていた。
次々に遭難者が搬送された場合、現場に一番近い斜里町国民健康保険病院では対応しきれなくなることを想定しての打診だった。
その日の当直は、偶然にも救命救急医が入っていた。
驚きの光景、目にした看護師長
土曜日の午後で勤務者は少な…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル